新規事業やプロダクト開発において、プロトタイプ開発とMVP開発は、それぞれ重要な役割を果たします。しかし、両者の違いを明確に理解している方は、意外と少ないのではないでしょうか.。

この記事では、プロトタイプ開発とMVP開発の概要、それぞれの特徴や効果的な併用方法などについて具体的に解説します。

開発手法への理解を深めることで、最適な手法を選択できるようになるだけでなく、今後の業務に活用し、より良い製品開発に繋げることが可能になります。ぜひ最後までご覧ください。

プロトタイプ開発とMVP（Minimum Viable Product）開発

プロトタイプ開発とMVP開発は、どちらもプロダクト開発において重要なステップです。しかし、それぞれ異なる目的とプロセスを持っているため、両者の違いを理解しておくことが重要です。

多くの企業やスタートアップでは、どちらか一方ではなく、両方を併用することで効果を上げています。したがって、双方の理解と活用方法を知ることは大きなメリットになります。

プロトタイプ開発とMVP開発を適切に活用することで、開発リスクを軽減させ、コストの削減につなげることができます。その結果、新製品やサービスの成功率を高めることができ、会社にとって大きな利点となるでしょう。

また、プロトタイプ開発とMVP開発の違いや効率的な使用方法を理解しておくことは、将来的に新規開発の分野を任された際に、大いに役立つ知識となります。続けて詳細を解説していきます。

プロトタイプ開発とは？その目的と効果

プロトタイプ開発とは、製品やサービスの基本的な機能を視覚的に確認することを目標とし、実際の市場に商品を出すことを目的としていないのが特徴です。視覚的に確認できるため、情報共有・整理が容易で、コストを削減できるという強みがあります。

では、具体的な特徴や活用シーンについて、より詳しく解説していきましょう。

プロトタイプ開発の特徴

プロトタイプ開発は、製品やサービスの設計や基本的な機能を視覚的に確認することを目的としています。市場投入を意図していないため、「一度市場に出した商品を検討し直す」といったコストがかさむことはありません。

市場投入が目的ではないため、全機能の実装は不要で、製品の構造やUIの検証に重点が置かれているのが特徴です。これにより、顧客や利用者の具体的な意見をもとに、効果的な議論を重ねることができます。

その結果、変更やフィードバックの反映が容易になり、製品の改良・修正をスムーズに進めることができるという利点があります。

活用シーン

プロトタイプ開発は、主に「ユーザビリティテスト」と「アイデアの可視化」において活用することができます。

「ユーザビリティテスト」とは、実際のユーザーや顧客に新しい製品やサービスを使ってもらい、どのように感じたかを検証・評価するためのテストのことです。例えば、まだ商品化していない新商品を無料で試してもらい、生の消費者・利用者の声を聞き、率直な意見や改善点を収集することも、ユーザビリティテストの1つです。

特に複雑なアプリやサービスの新規開発の際、ユーザビリティテストは重要なステップであり、プロトタイプ開発を使用したテストが必要不可欠とされています。

「アイデアの可視化」では、抽象的なコンセプトを視覚化することで、チームやクライアントに伝える際に活用しやすくなります。また、視覚的に確認することで、誤解やコミュニケーションエラーを防止し、スムーズな開発を進めることが可能です。

さらに、投資家へのプレゼンテーションの資料としても活用できます。プロトタイプ開発を用いて、投資家やステークホルダーに対してビジョンを具体的に示すことができるためです。 実際の製品に近い形でプレゼンテーションを行うことで、信頼性を高めることができるでしょう。

MVP開発とは？最小限で最大の効果を得る方法

次にMVP開発について解説していきます。MVP開発とは、プロトタイプ開発とは異なり、実際に市場に出すことを目的として投入される手法のことです。

ユーザーや顧客の意見を多く取り入れることができるため、ユーザー中心の開発を行うことができるのが魅力です。また、最低限の機能で、ユーザーや顧客が価値を感じるまで検討・検証を繰り返す手法であることも特徴的です。

プロトタイプ開発とは大きく異なる目的と目標であることがわかります。

MVP開発の特徴

MVP開発では、市場に出すことを目的としているため、迅速な市場投入が特徴的です。フル機能の製品を開発する前に市場に投入し、ユーザーや顧客の反応・評価をもとに完成まで進める手法のため、開発段階で完璧にする必要はなく、リソースを無駄にするリスクを最小限に抑えることが可能となります。

また、ユーザーや顧客の反応を早期に検証でき、初期ユーザーからのフィードバックを得ながら、新規のユーザーや顧客のニーズに合わせて多くの視点から改良することができます。ニーズに合わせて商品・サービスを開発するため、製品の方向性を柔軟に転換できるのも魅力的なポイントです。

活用シーン

「市場ニーズの検証」「フィードバックの収集」において有効な手法です。

「市場ニーズの検証」では、製品の市場適応性を確認するために使用されるため、その結果、在庫を抱えることなく需要を確認でき、初期投資を抑えることができます。

「フィードバックの収集」では、初期のリリースで集めたフィードバックのほか、最新のフィードバックも取り入れることができるため、段階的に製品をバージョンアップさせることが可能になり、完成までまっすぐに進むことが可能です。

また、MVPを通じて具体的な意見を手に入れることができるため、どの機能がユーザーにとって最も重要であるかを把握できます。これにより、今後の開発において優先すべき機能を明確にすることができるため、問題点に優先順位をつけて取り組むことが可能となるのです。

プロトタイプ開発とMVP開発の比較表

	プロトタイプ開発	MVP開発
目的	アイデアの視覚化、フィードバックの収集	最小限の機能で市場の反応を検証
対象	チーム、ステークホルダー	実際の顧客
フィードバックの性質	内部テスト、デザインやUI/UXの改良	実際の市場からのリアルタイムなフィードバック
機能の完備度	部分的に機能するが、未完成	必須の機能のみが備わっている
リリースの有無	市場に出すことは想定されていない	実際に市場にリリースする

プロトタイプ開発とMVP開発の効果的な併用戦略

プロトタイプ開発とMVP開発を効果的に活用するためには、互いの足りない要素を補完し合うように併用することがポイントになります。うまく併用することで、製品開発のプロセス全体を効率的に進め、時間を削減することができます。

また、会社としても最低限の予算や人員で利益を出すことができるため、魅力的な戦略と言えるでしょう。

例えば、プロトタイプ開発を用いて内部のフィードバックを収集し、プロダクトの基礎が固まった段階でMVP開発を用いてリリースします。その結果、不要な商品・サービスを提供する期間が短くなるため、開発コストを削減できるだけでなく、より早く市場に適した商品を提供することが可能になります。

これをせずに、アイデアがまとまっていない状況で新規事業を開発することは容易ではありません。そのため、プロトタイプ開発とMVP開発を互いが補完できるように併用することは、とても重要だと言えます。

プロトタイプ開発とMVP開発の選択基準とそのタイミング

プロトタイプ開発とMVP開発の選択基準は、新規製品やサービスを開発する際に、適したフェーズや目標を基準にして考えることが一般的です。具体的にどのタイミングで何を選択するのが良いのかを解説していきます。

プロトタイプ開発を選ぶべきタイミング

プロトタイプ開発を選ぶのは、アイデアの段階で各意見やチーム全体のコンセンサスを得たい場合や、UI/UXのデザインやユーザビリティに関するフィードバックを求めたい場合、開発コストを抑えながら商品開発の試行錯誤を行いたい場合に有効です。

市場に出ることが目的ではないため、低コストで商品開発の第一歩を踏み出すことができるでしょう。また、在庫管理が難しい商品やサービスの提供を行う際に、在庫を無駄にすることなく商品開発を進められます。

つまり、会社側も在庫ロスを作ることなく、より良い商品を開発することが可能となります。

MVP開発を選ぶべきタイミング

MVP開発は、製品を商品化するための基本機能が整っている上で、実際の市場での反応を確認したい場合に選択します。ユーザーや顧客の生の声を得たい場合や、初期のリソースで実際のユーザーに価値を提供した上で、迅速なフィードバックを収集したい場合に効果的に活用可能です。

また、競合製品との差別化を図り、早い段階で市場に製品を投入したい場合にも、MVP開発を有効に活用することができます。市場に出すことを目的としているため、製品化のために活用できるのです。

長期的な視点から見る、プロトタイプ開発とMVP開発の効果

前述の内容から、プロトタイプ開発とMVP開発はどちらも開発の初期段階を効率化するための手段ではありますが、長期的な視点で見ると製品開発全体に大きく関与しており、成功を得るために必要不可欠な手法であることがわかります。

プロトタイプ開発では、失敗や修正箇所を早期に発見し、迅速に対応することができます。一方、MVP開発は実際の顧客やユーザーから得たフィードバックや意見をもとに、製品をより高いレベルにグレードアップするために必要です。

つまり、プロトタイプで得たフィードバックをもとにMVPを開発し、その後のユーザーの反応を分析することで、製品の進化を促進することにつながります。これにより、市場により適した製品を提供できるようになり、競合他社に負けない競争力を高めることができます。

この2つの手法を組み合わせて活用することで、必要コストを低く抑えながら、在庫を無駄にすることなくリスクを抑え、最終的には成功につながるプロダクトを生み出すことが可能になるでしょう。

まとめ

プロトタイプ開発とMVP開発は、どちらも新規事業やプロダクト開発において重要な役割を担いますが、その目的や手法は大きく異なります。

プロトタイプ開発は、アイデアを具体的な形にすることで、開発初期段階における課題や改善点を発見し、開発の方向性を定めるために有効です。一方、MVP開発は、必要最小限の機能を備えた製品を市場に投入することで、顧客の反応を直接的に得て、製品開発の精度を高めるために役立ちます。

両者を効果的に併用することで、開発リスクを抑えながら、顧客のニーズに合致した製品を効率的に開発することが可能になります。この記事が、プロトタイプ開発とMVP開発の違いを理解し、新規開発を成功させるための一助となれば幸いです。